今回は2025年に登場が予想されている「MediaTek MT8196」搭載のChromebookについての話題です。
現在開発中のChromebookの中身であるベースボード(コードネーム「Rauru」)には「MediaTek MT8196」が搭載されるとされており、このベースボードを採用したChromebookが少なくとも2つ開発中で、2025年に登場予定となっています。
これまでは「MediaTek MT8196」についての詳細は不明だったのですが、海外メディアサイトのChrome UboxedがMediaTek MT8196に関する開発コードから、MediaTek MT8196がMediaTekのフラッグシップSoC「Dimensity 9400」であることを突き止めました。
今回の記事ではDimensity 9400とは何か、またその実力について現時点で分かっていることを紹介します。結論から言うと、すごくよさそう(小並感)。
Dimensity 9400とは
MediaTekのフラッグシップ「Dimensity 9400」は主にAndroid向けのSoCです。MediaTekの公式サイトによると、構成は以下の通りです。
- Arm Cortex-X925(3.63GHz) ×1
- Arm Cortex-X4 ×3
- Arm Cortex-A720 ×4
今まではビッグコアとスモールコアを組み合わせることにより、ピーク時のパワーと省電力性を両立させる、というのが定石だったのですが、今回は8コア全てビッグコアとなっています。
スモールコアを使う理由は省電力性にあったわけですが、パワーがありながらも省電力性に優れたコアが誕生すれば、スモールコアの存在意義は(安さ以外)消滅します。ミッドレンジなどのSoCではまだスモールコアの出番はありそうですが、今回のハイエンドSoCにおいてはオールビッグコアが主流になっていくのが必然のように思われます。
Dimensity 9400は前世代の主力チップセットであるDimensity 9300と比較して、シングルコアパフォーマンスが35%、マルチコアパフォーマンスが28%高速化されている模様です。また、TSMCの第2世代3nmプロセスで製造され、前世代よりも最大40% 電力効率が高く、より長いバッテリー駆動時間を実現しているとのこと。
GPUは12コアのArm Immortalis-G925を採用、前世代と比較して最大40%高速なレイトレーシングパフォーマンスにより、超没入型のゲーム体験を実現するとのこと。また、Dimensity 9400は第8世代NPUを搭載。卓越した生成AIパフォーマンスを実現する業界初の機能を数多く備えています。
その他、足回りも大幅に向上しており、最新のグローバル5G標準と新しいRFFEをサポート。5ストリーム (2x2 + 2x2 + 1x1) による Wi-Fi 7トライバンド同時接続で最大7.3GbpsのWi-Fiデータレートを実現。新しい4nm Wi-Fi 7/BluetoothチップによりWi-FiとBluetoothの電力効率が50%向上しているとのことです。
要するにDimensity 9400 はAI性能やゲーミング性能に優れているハイパフォーマンスのSoCということになります。
MT8196がDimensity 9400と判明した経緯
MT8196がDimensity 9400と判明した経緯としては、Chrome UboxedがMT8196搭載Chromebookの開発コードには「arm,cortex-a720」が4つ、「arm,cortex-x4」が3つ、「arm,cortex-x925」が1つとの記載があることを発見。この特徴に一致するのはDimensity 9400に違いない、というところ。
Dimensity 9400 の実力は? ベンチスコアを比較
まだ数こそ少ないですが、Geekbenchのサイトでは既に「Google Rauru」のベンチスコアが公開されています。
バラつきがありますが、シングルコアで2,100前後、マルチコアで6,000前後といったところです。
Dimensity 9400搭載と思われるボード「Google Rauru」のスコア
ということで、これと似たスコアのものを探してみました。
シングルスコアで2,100程度ということですが、これはデスクトップPC用「Ryzen」のミドルクラスに匹敵する値となります。同サイトによると、「AMD Ryzen 7 5800X3D」で2,117、「AMD Ryzen 9 5900」で2,141です。また、M1チップ搭載のMacBook Proは2,310とDimensity 9400をやや上回りますが、2020年のiMac(1,661)よりは格段に上のスコアです。
マルチコアスコアになると「Intel Core i5-11500H」(5,990)や「AMD Ryzen 5 3500X」(5,929)などが相当します。Macbookだと2019年のMacBook Pro(Core i9-9880H搭載)が5,979と同等レベルのスコアとなっています。
マルチコアスコアだけを見るとやや見劣りしますが、Dimensity 9400は元々タブレットやスマホ向けに開発されているチップであり、AI機能やGPU機能、最新の接続性や省電力性など他のチップにはないところを加味すると大健闘といったところだと思います。
このチップは間違いなくChromebookのレベルを2段階ほど引き上げてくれることでしょう。期待です。
今後発売されるMediaTek MT8196 Chromebookに搭載予定のDimensity 9400とは まとめ
Dimensity 9400を搭載したMT8196 Chromebookは、Chromebookの概念を大きく変える存在となるでしょう。高性能なCPUとAI処理能力、そして高いバッテリー効率は、仕事からエンターテイメントまで、幅広い用途においてユーザーの期待に応えるはずです。この革新的なチップセットによって、Chromebookはより多くのユーザーに選ばれる存在となることでしょう。今後も推移の注視を続けたい。
ソース:Upcoming MediaTek MT8196 Chromebooks will basically have the Dimensity 9400 inside